介護現場で気をつけたい言葉遣い

介護現場のスタッフの中には、稀に利用者さん対して幼児言葉を使う人がいます。身体が弱り、あるいは認知症で精神的に脆くなったお年寄りを「守ってあげよう」とする気持ちが強すぎて、こうした言葉遣いになってしまうのでしょう。

もちろん、それは間違いです。「お年寄りは子どもみたいで可愛い」と勘違いしているスタッフは若い人に多く、本人には自覚がありません。愛情を込めた話し言葉の感覚で接しているのかもしれませんが、幼児言葉は結果として侮辱になります。

実際、幼児言葉は「私はあなたを介護してあげている」というニュアンスを与えかねません。それだけでなく、「あなたは人間として、どんどん子どもに逆戻りしている」「年齢こそ自分たちより上だけれど、人間としては劣っているのですよ」といった意味を、幼児言葉で示している形になっているのです。幼児言葉はそれほどまでに大変な破壊力があるのです。

幼児言葉を使われると、お年寄りの自尊心はジワリと萎えていきます。自尊心が萎えるということは、心が自立できなくなるということです。そうならないためにも、利用者さんには、きちんと大人として敬語で接することが重要です。うわべだけの敬語ではなく、尊敬をこめて言葉を選ぶようにしましょう。

このような当たり前の人間関係の積み重ねを「介護」というのです。介護現場では言葉の大切さを忘れてはいけません。これまでできたことが自分一人でできなくなったお年寄りは、心が弱りやすく、特に言葉に敏感になるものだからです。

介護現場の仕事の中心は、コミュニケーションといっても過言ではありません。小さな言葉遣いで、相手を傷つける可能性がある一方、相手を笑顔にさせることもできます。利用者さんとの信頼関係は、思いやりある言葉のキャッチボールで太く、強くなるものです。

充実した介護士ライフを送りたいのであれば、言葉遣いはもちろん、現場で信頼されている人の立ち振る舞いを真似して、周囲の人との距離を縮めていきましょう。その努力は、必ず後になって大きな自信・そしてやりがいとなって返ってきます。もし「介護の仕事を続ける自信がない」と感じている人は、まず介護現場のやりがいとは何なのかを調べて行動してみるといいでしょう。